部屋で楽器を鳴らすと、音が壁にはね返って、にごって聞こえる。配信の声が、やけに長く響く。そんなときに名前が出てくるのが吸音材です。
吸音材とは、音を吸って壁からのはね返りを減らす材料のことです。音を外に漏らさない遮音材とは役目が違います。防音メーカーと吸音材の専門店の解説をもとに、吸音材の正体、仕組み、遮音材との違い、種類、選び方、貼り方、勘違いしやすい点の順に、なるべく平たく書きます。
吸音材とは、音を吸ってはね返りを減らす材料
音は空気の波です。壁にぶつかると、そのまま部屋の中へはね返ります。吸音材は、表面にある無数の小さな穴に音の波を入り込ませ、中で空気をこすらせて熱に変え、はね返る音を減らす材料です。スポンジやガラスの綿のように、すき間の多い材料が向いています。
吸音材を貼った部屋は、手をたたいたときの「パン」という響きが短くなります。楽器の音がにごらなくなり、マイクで拾う声がはっきりします。音そのものが小さくなるのではなく、余計な響きが減るのだと考えると分かりやすいです。
遮音材との違い。吸音材は音を外に漏らさない材料ではない
| 項目 | 吸音材 | 遮音材 |
|---|---|---|
| 役目 | 部屋の中の響きを減らす | 音を外に通さない |
| 材料 | 軽くてすき間が多い(ウレタン、グラスウール、フェルト) | 重くて密度が高い(遮音シート、石こうボード、鉛) |
| 音は | 吸われて熱になる | はね返される |
| 単体で音漏れは | ほとんど減らない | 減るが、部屋の中は響く |
ここが一番の勘違いのもとです。吸音材は軽くて音を通すので、壁一面に貼っても隣の部屋への音漏れはほとんど減りません。音漏れを止めるのは重い遮音材の仕事で、吸音材は部屋の中の響きを整える道具です。防音メーカーの解説でも、吸音材単体は遮音には向かないと明記されています。
逆に、遮音材だけの部屋は、音が全部はね返るので中がうるさくなります。だから防音室は、外側に遮音材、内側に吸音材と、両方を重ねて作ります。
吸音材の種類は3つ。家で使うのはほぼ多孔質型
多孔質型。ウレタン、グラスウール、フェルト
小さな穴がたくさん開いた材料です。ウレタンスポンジは軽くて切りやすく、両面テープで壁に貼れるので、家で一番使われています。グラスウールは値段のわりに吸音力が高く、壁の中に入れる材料の定番ですが、湿気で性能が落ち、繊維がちくちくするので、むき出しでは使いません。ポリエステルのフェルトは扱いやすく、燃えにくい製品が多いです。
共鳴型。低い音を狙って吸う
穴の開いた板の裏に空気の層を作り、特定の高さの音を共鳴させて吸う仕組みです。低い音に効きますが、設計が要るので、スタジオや会議室の内装で使われます。
板振動型。薄い板を震わせて吸う
合板などの薄い板を壁から少し離して張り、板が震えることで低い音を吸います。これも建物側の工事で使う方法で、家で後から貼るものではありません。
吸音材を選ぶときに見る3つのこと
厚さ。低い音を吸うなら5cm以上
高い音は薄い材料でも吸えますが、低い音は波が長いので、厚みが無いと吸えません。声やアコースティックギターの響きを整えるなら3〜5cm、ベースやドラムの低音も抑えたいなら5cm以上か、壁から少し浮かせて貼って裏に空気の層を作ります。
吸音率。同じ測り方の数字で比べる
製品の説明にある吸音率は、1に近いほど音を吸うという数字です。ただし測り方が2つあり、垂直入射法と残響室法では数字が変わります。違う測り方の数字を並べても比べられないので、同じ測り方の製品どうしで見ます。
枚数の目安。30cm角なら6畳の壁1面に12〜18枚
市販の吸音材は30cm角の12枚組が多く、12枚で約1.08平方メートルです。6畳の部屋の壁1面はおよそ6〜7平方メートルなので、2〜3割に貼るなら12〜18枚で足ります。最初から2セット買わず、1セット貼って響きを聞いてから買い足す方が無駄が出ません。
燃えにくさと貼り方。難燃表示と両面テープの跡
ウレタンは燃えやすい材料なので、難燃の表示がある製品を選びます。賃貸なら、壁紙をはがさない貼り方も考えます。両面テープで直接貼ると、はがすときに壁紙が傷むので、マスキングテープを先に貼ってその上に両面テープを使うか、パネルにして立てかけます。
効く貼り方。全面より、音が当たる場所に
壁一面に貼る必要はありません。スピーカーやアンプの正面の壁、自分の後ろの壁、天井の角の3か所に、壁の2〜3割の面積を貼るだけで、手をたたいたときの響きははっきり短くなります。まず少なめに貼り、手をたたいて響きを聞き、足りなければ足す順で進めると、貼りすぎて音が死ぬ失敗を防げます。
- 貼る前に壁のほこりと油分を拭く。テープがすぐはがれる原因になる
- 向かい合う壁の片方だけに貼る。両方に貼らなくても、はね返りの往復は止まる
- 角に厚い物を置く。低い音は部屋の角にたまりやすい
- 窓やドアには貼らず、厚いカーテンで代用する
- グラスウールは布や不織布で包み、繊維が飛ばないようにする
吸音材でよくある勘違い
「吸音材を貼れば防音室になる」は違う
これが一番多い相談です。吸音材は音漏れをほとんど減らしません。隣への音が問題なら、遮音シートや石こうボードで壁を重くするか、防音室を組む必要があります。吸音材は、その内側で響きを整える役です。
卵のパックやカーペットは吸音材の代わりになる?
卵のパックは薄すぎて高い音しか吸えず、燃えやすいので勧めません。厚いカーペットやカーテン、本棚の本は、ある程度の吸音になります。まずは部屋にある布や本を増やし、足りない分を吸音材で補う考え方で足ります。
貼りすぎると音が悪くなる
響きがまったく無い部屋は、音が乾いて聞き疲れします。楽器の練習や配信なら、少し響きが残るくらいがちょうどよく、壁の2〜3割から始めて調整します。
吸音材は部屋の響きを減らす材料。音漏れは遮音材の仕事
吸音材とは、無数の小さな穴で音を吸い、壁からのはね返りを減らす材料です。音漏れを止める遮音材とは役目が違い、家で使うならウレタンかフェルトの多孔質型を3〜5cmの厚さで、音が当たる壁の2〜3割に貼るのが基本で、貼りすぎると音が乾きます。
買う前に、部屋で手をたたいてみてください。響きが長いなら吸音材、隣に音が届いているなら遮音材。その順で考えれば、買い物を間違えません。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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