同じ5Aを買ったのに、前の1組とシンバルの音が違う。原因はたいてい先端(チップ)の形か素材です。ドラムスティックの先端の違いは、シンバルやヘッドに当たる面の広さと、木かナイロンかの2つで決まります。ここが分かると、店の棚で迷わずに次の1組を決められます。先端の形と素材の見分け方、ジャンルと電子ドラムでの選び方、欠けたときの替え時まで順に書きました。
先端はシンバルに当たる面の広さで音が変わる
スティックの先端は、シンバルとヘッドに直接触れる唯一の部分です。小さい部分ですが、先端が当たる面が小さいほど音の粒がはっきりして明るく、広いほど太くて音量が出ます。太さや長さはヘッドの音量に効き、シンバルの音色は先端でほぼ決まります。
先端の形が丸ければ、どの角度で当てても面の広さが変わりません。涙形や円錐形は、スティックを寝かせるほど当たる面が広くなります。だから同じ1組でも、叩く角度で音を変えられるのです。
ライドシンバルを刻んだときに「チッチッ」と粒が立つか、「シャーッ」と広がるかは、先端の形で分かれます。ヘッドの音は太さと重さで決まる部分が大きいので、シンバルの音が気になる人ほど先端を見てください。
形は6種類、丸は安定して涙形は角度で変わる
先端の形は、丸(ボール、ラウンド)、涙(ティアドロップ)、樽(バレル)、どんぐり(アコーン)、円錐(トライアングル)、そして先端の無いチップレスの6つに分かれます。丸は角度で音が変わらず安定し、涙形と円錐形は角度で音を変えられ、樽形は当たる面が広くて音量が出る、この3グループで覚えると迷いません。
| 先端の形 | 当たる面 | シンバルの音 | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 丸(ボール) | 小さく、角度で変わらない | 明るく粒がそろう | 初心者、ロックで安定した音が欲しい人 |
| 涙(ティアドロップ) | 角度で変わる | 寝かせると太く、立てると細かい | 音を叩き分けたい人、ジャズ |
| 樽(バレル) | 広い | 太くて音量が出る | ロック、ハードロック |
| どんぐり(アコーン) | やや広い | 太さと粒の両方がある | ジャンルを決めていない人 |
| 円錐(トライアングル) | 角度で大きく変わる | 変化が一番大きい | ジャズ、経験者 |
| チップレス(先端なし) | 一番広い | 太くて荒い | ティンバレス、マーチング |
初めての1組なら、丸か涙形をおすすめします。丸は当てる角度を気にしなくても音がそろうので、フォームが固まる前の練習に向きます。涙形は角度で音が変わるぶん、叩き方の癖がそのまま音に出ます。
音を変えたいわけではなく、とにかく音量が欲しい人は樽形です。ハードロックやメタルで太い音を出したいなら、樽形か、先端の無いものを選びます。ただしチップレスは重く、シンバルへの当たりも強いので、練習スタジオでいきなり使うと周りの音を消してしまいます。
円錐形は、寝かせたときと立てたときの音の差が一番大きい形です。使いこなせば1組でいろいろな音が出せますが、角度が少しずれるだけで音がばらつくので、最初の1組には向きません。
木の先端は温かく、ナイロンは明るくて減らない
先端の素材は、スティック本体と同じ木で削り出したウッドチップと、樹脂を付けたナイロンチップの2つです。木の先端は柔らかく温かい音で、ナイロンの先端は輪郭のはっきりした明るい音になります。店で売られているスティックの大半は木の先端です。
木の先端は、叩くうちに削れて平らになり、やがて欠けます。削れると当たる面が変わるので、買ったときと音が変わっていきます。ナイロンの先端は削れないので、1組を使い切るまで音が変わりません。
ナイロンの音が一番はっきり出るのは、ライドシンバルを刻んだときです。粒が立って抜けがよくなるので、バンドの中でライドが埋もれる人は、ナイロンに替えるだけで聞こえ方が変わります。逆に、シンバルを柔らかく鳴らしたいジャズやバラードでは、木の先端のほうが合います。
ナイロンにも弱点があります。樹脂の先端が木から外れて飛ぶことがあり、外れた時点でそのスティックは使えません。汗や湿気に強く、屋外や長いライブで音を変えたくない人には向きますが、初めての1組は木を選び、2組目でナイロンを聞き比べる順がおすすめです。
電子ドラムは木の先端で軽いスティックを使う
電子ドラムを叩く人は、先端の選び方が少し変わります。ゴムのパッドには木の先端で、5Aか7Aの軽いスティックを使うのがメーカーの案内です。ナイロンや硬い先端、重すぎるスティックはパッドを傷めやすいとされています。
ローランドの電子ドラムの案内では、パッドの摩耗を防ぐために木の先端をすすめ、生ドラム用と電子ドラム用でスティックを分けることをすすめています。メッシュヘッドは木でもナイロンでも使えますが、ゴムのパッドではナイロンの音がやや硬く聞こえます。
電子ドラムでは、先端の形で音色が変わることもほとんどありません。センサーが拾うのは当たる強さと位置なので、形で音を作る楽しみは生ドラムほどありません。電子ドラムだけを叩く人は、形にこだわるより、握りやすい太さと重さで選んでください。
先端が欠けたら音が変わる前に替える
木の先端は、削れて平らになるまでは使えます。先端に角が立ったり、一部が欠けたりした時点で、その1組は替え時です。音が変わったと感じてからでは遅く、欠けた角でシンバルを叩き続けると、表面に傷が付く原因になります。
替え時を見分ける手順は3つです。
- 先端を指でなぞる。ざらつきや角があれば、欠け始めています。
- 左右の先端を並べて見る。片方だけ平らなら、そちらの音が変わっています。
- ライドを軽く刻む。粒がにごって聞こえたら、先端が平らになっています。
ナイロンの先端は削れませんが、樹脂が外れたらすぐに替えます。木がむき出しになった状態は、木の先端が欠けたのと同じです。
左右で削れ方が違うのは、利き手とフレーズの癖です。右手でライドを刻む人は右だけ先が減ります。練習のときに左右を入れ替えて持つと、1組を長く使えます。ただし本番では、音がそろっているほうを右に持ってください。
同じ「5A」でも先端の形はメーカーで違う
5Aや7Aの数字とアルファベットは、太さと長さの規格で、先端の形は決めていません。同じ5Aでも、先端が涙形のメーカーもあれば、楕円やどんぐりに近いメーカーもあるので、メーカーを変えると音が変わります。
目安として、5Aは太さ14〜15mm、長さ400mm前後です。7Aはそれより細く軽く、5Bは太く、2Bはさらに太くて重くなります。ジャズは7Aから5A、ロックは5Bから2B、ハードロックやメタルは2B以上がよく使われます。
順番としては、まず太さを5Aで固定し、次に先端の形と素材を決め、最後にメーカーを決めます。太さと先端を同時に変えると、どちらで音が変わったのか分からなくなります。1回に変えるのは1か所だけにしてください。
店で手に取ったら、先端のほかに2か所を見ます。木目が握りから先端まで真っすぐ通っているか、そして床で転がして曲がっていないか。2本の重さは楽器店の量りで比べ、差の少ない組を選びます。木目が横に走っているものや、先端に節があるものは折れやすいので避けてください。
店で見る順番は、太さ、先端の形、先端の素材、木目、まっすぐさ、2本の重さです。先端の形と素材はパッケージの表記で分かるので、木目と重さだけ実物で確かめれば十分です。
次の1組は、ジャンルと叩く場所で先端を1つ決める
ドラムスティックの先端の違いは、当たる面の広さと素材の2つに整理できます。安定した音が欲しいなら丸、叩き分けたいなら涙形、音量なら樽形、シンバルの粒を立てたいならナイロン、電子ドラムなら木の軽いもの、この分け方で次の1組が決まります。
これから始める人は、5Aの木の先端で、丸か涙形を1組買ってください。それを2〜3週間叩いて、シンバルの音がぼやける、音量が足りない、と感じたところで次の形に進みます。最初から円錐形やチップレスに手を出すと、音がばらついて上達が分かりにくくなります。
すでに1組持っている人は、今の先端の形と素材をパッケージか公式サイトで確かめてください。次に買うときは、形か素材のどちらか1か所だけ変えます。そうすれば、音が変わった理由がその場で分かり、自分の好みが1組ごとにはっきりしていきます。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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