部屋でギターやドラムを鳴らすと音が響いて、録音にも部屋の反響が入ってしまう。そこから「吸音材料とは何か」を調べ始めた人が多いです。先に答えを書くと、吸音材料は部屋の中の響きを減らす材料で、隣の部屋への音漏れはほぼ減りません。ここを取り違えると、貼ったのに何も変わらないという結果になります。仕組みと種類、楽器の部屋での貼る順番、効かなかったときの見分け方まで書きます。
吸音材料とは音を吸って熱に変える材料!遮音材とは役目が違う
吸音材料は、空気を伝わってきた音を中に取り込んで、小さな熱に変える材料です。材料の中にある無数のすき間に音が入り、壁との摩擦で音のエネルギーが熱に変わるので、跳ね返ってくる音が減ります。
グラスウールやウレタンのように、中がスカスカで空気を多く含む材料が代表です。手で押すとつぶれるくらい柔らかいものがほとんどです。
遮音材はその逆で、音を跳ね返して向こう側に通さない材料です。重い材料ほど効くので、鉛のシートやゴムのシートが使われます。
防音材というのは、この吸音材と遮音材、それに振動を止める防振材をまとめた呼び方です。「防音材を買えば静かになる」と思っていると、吸音材だけを買って音漏れが減らない、ということが起きます。
遮音材だけで部屋を囲うと、今度は音が跳ね返り続けて部屋の中がうるさくなります。だから本気で防音する部屋は、遮音材で囲んだ内側に吸音材を貼ります。この組み合わせが基本です。
吸音材料の種類は3つ!家庭で使うのはほぼ多孔質型
吸音材料は、音を吸う仕組みで3つに分かれます。家庭や楽器の部屋で使うのは、ほぼ全部が多孔質型です。残りの2つは、ホールや音楽室を作るときに設計に組み込むものです。
多孔質型は、繊維やスポンジのすき間で音を熱に変えるタイプです。グラスウール、ロックウール、軟質ウレタン、フェルト、ポリエステルが入ります。市販の吸音パネルは、ほとんどこれです。
板振動型は、合板などの板と、その後ろの空気の層を組み合わせた構造です。板が震えることで低い音を吸います。音楽ホールで残響を調整するときに使われる方法で、貼って使う材料ではありません。
共鳴型は、穴の開いた板の後ろに空気の層を作った構造です。穴の大きさと間隔で決まる特定の高さの音だけをよく吸います。学校の音楽室の壁にある穴あきボードがこれです。
楽器の部屋を自分で整えるなら、多孔質型のパネルを選んでください。低い音がこもるという悩みだけは、次に書く厚みと空気層で対処します。
効き方は厚みと密度と背後の空気層で決まる
同じ多孔質型でも、効き方は3つの条件で変わります。低い音ほど厚みが必要で、密度は高いほど低い音まで吸い、壁との間に空気の層があると薄い材料でも低い音まで吸えます。
厚みから書きます。多孔質型の吸音率は、厚みが音の波長の4分の1程度を超えるとほぼ一定になります。逆に言うと、そこより薄いと低い音は吸えません。
音の波長は、音速の秒速約340mを周波数で割った長さです。500Hzの音なら波長は約68cmで、その4分の1は約17cmです。100Hzの低い音なら波長は約3.4mになり、4分の1でも85cmです。
つまり、厚さ5cmのパネルを壁に直接貼っても、ベースやバスドラムの低い音はほとんど吸えません。声やアコースティックギターの中高音は、5cmでもよく吸えます。
ここで効くのが背後の空気層です。パネルを壁から数cm浮かせて取り付けると、同じ厚みでも低い音まで吸えるようになります。壁にべた貼りするより、桟を入れて浮かせるほうが効きます。
密度は、高いほど低い音の吸音率が上がります。ただし一定以上に高くしても差は出ません。それと、表面をペンキで塗ると通気性が落ちて、高い音の吸音率が下がります。布で覆う程度なら大きくは落ちません。
素材別の違いは表で分かる!グラスウールからフェルトまで
多孔質型の中でも、素材によって向く場面と気をつける点が違います。自分で貼るならポリエステルかウレタン、壁や天井の中に入れるならグラスウールかロックウールが使い分けの目安です。
| 素材 | 向く場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| グラスウール | 中高音の吸音と断熱を兼ねる壁の中 | 繊維が肌に刺さる。湿気で性能が落ちる。自立しない |
| ロックウール | 密度が高く低い音まで吸いたい壁の中 | 切り口がチクチクする。テープで覆う必要がある |
| 軟質ウレタン | 自分で切って貼る室内のパネル | 湿気と日光で劣化する。屋外や浴室の近くには向かない |
| ポリエステル | 肌に触れる場所や子どもがいる部屋 | 繊維が飛ばず安全だが、同じ厚みならグラスウールより吸音は控えめ |
| フェルト | 薄く仕上げたい壁や見た目重視の部屋 | 薄いので低い音は吸えない。細かい繊維ほどよく吸う |
| メラミンフォーム | 軽さと燃えにくさが必要な天井 | 割れやすく、接着剤が付きにくい |
グラスウールとロックウールは鉱物の繊維です。性能と燃えにくさでは上ですが、むき出しで室内に置くと繊維が舞います。袋に入った製品を使うか、壁の中に入れる前提で選んでください。
ウレタンは加工がしやすく、カッターで切れます。ただ、湿気で加水分解という劣化が起きるので、窓際や浴室の隣の壁では数年でボロボロになります。
ポリエステルは、繊維が飛ばず、肌に触れても刺さりません。楽器の部屋で自分の背中側や手の届く高さに貼るなら、これがいちばん扱いやすいです。
楽器の部屋に貼るなら順番はこの5ステップ
吸音材料は、貼る場所と順番で結果が変わります。最初の1枚は、音が出る方向の正面の壁です。部屋全体に貼るのは、それで足りなかったときでかまいません。
- 部屋の真ん中で手を1回たたいて、響きが何秒残るかを聞く。この時点の響きを覚えておく
- アンプやスピーカー、自分の口が向いている壁を「正面」と決める。そこに最初の数枚を貼る
- 厚みを決める。声やアコースティックギターなら2.5cm前後、ベースやドラムなら5cmを壁から浮かせて付ける
- 賃貸なら壁を傷つけない付け方にする。両面テープ、虫ピン、突っ張り式の柱に板を渡す方法がある
- 貼り終えたら、同じ場所で同じように手をたたいて比べる。まだ長ければ、正面の反対側の壁と天井に足す
ステップ1と5で同じことをするのは、自分の耳で差を確かめるためです。感覚だけで「効いた気がする」と判断すると、必要のない枚数まで買ってしまいます。
ステップ2で正面から貼るのは、音がいちばん強く当たって、いちばん強く跳ね返ってくる面だからです。横の壁や後ろの壁は、正面より当たる音が弱いので後回しで大丈夫です。
ステップ4の突っ張り式の柱は、床と天井の間に柱を立てて、そこに板やパネルを固定する方法です。壁に穴を開けずに、壁から数cm浮かせた取り付けができるので、低い音の対策と賃貸の条件を一度に満たせます。
貼っても変わらないときは3ステップで吸音か遮音かを見分ける
吸音材料を貼ったのに変わらない、という相談の多くは、減らしたかった音が「響き」ではなく「音漏れ」だったものです。部屋の中で聞く音が変わったのに、隣や外で聞く音が変わっていないなら、それは遮音の問題です。
- 部屋の中で手をたたき、貼る前より響きが短くなったかを確かめる。短くなっていれば吸音材は働いている
- 家族や隣人に、貼る前と後で聞こえ方が変わったかを聞く。変わっていなければ音漏れの問題
- 音漏れなら、まずドアの下と窓のすき間をふさぐ。それでも足りなければ、遮音シートのような重い材料を壁に足す
ステップ1で響きも変わっていないなら、原因は枚数か厚みです。壁の一部に薄いパネルを数枚では、部屋の響きは変わりません。正面の壁の大半を覆うくらいの面積が要ります。
ステップ3で先にすき間をふさぐのは、音は空気の通り道があればそこから出ていくからです。壁に遮音シートを貼っても、ドアの下に1cmのすき間があれば、音はそこから漏れます。
遮音を本格的にやると、費用は一気に上がります。DAIKENの説明では、遮音性能を10dB上げると費用は2倍になるとされています。壁だけ遮音してもドアが弱ければそこから漏れるので、壁とドアの性能をそろえる必要もあります。
だからこそ、吸音材料を買う前に、自分の悩みが響きなのか音漏れなのかを決めておくことが大事です。響きなら吸音材料で解決します。音漏れなら、吸音材料はその一部でしかありません。
吸音材料は響きの悩みにだけ効く!買う前に決めるのは2つ
吸音材料とは、音を吸って熱に変え、部屋の中の響きを減らす材料です。買う前に決めるのは、悩みが響きか音漏れかということと、減らしたい音が低音か中高音かということの2つです。
響きの悩みなら、多孔質型のパネルを正面の壁に貼るところから始めてください。中高音なら2.5cm前後、低音なら5cmを壁から浮かせて付けます。
音漏れの悩みなら、吸音材料だけでは解決しません。すき間をふさぎ、重い遮音材を足し、その内側に吸音材料を貼る、という順番になります。
素材は、自分の手で貼るならポリエステルかウレタン、壁の中に入れるならグラスウールかロックウールです。肌に触れる場所と湿気の多い場所だけは、素材を選び直してください。
読み終えたら、まず部屋の真ん中で手を1回たたいてみてください。その響きの長さが、これから減らしていく対象です。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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