業界標準と聞いてモニターヘッドホンを買ったのに、通勤の電車では音量が足りず、家で聴くと1時間で耳が痛い。原因はヘッドホンの不良ではなく、音を楽しむためではなく音を確かめるために作られた道具を、聴く場面に合わせずに使っていることにあります。この記事を読み終わると、通勤、自宅、DTMや配信のそれぞれで何に困るかと、困らない買い方の数字が分かります。
モニターヘッドホンのデメリットは音が正直すぎること
モニターヘッドホンは、録音した音をそのまま聞かせるために低音も高音も盛らずに作られています。デメリットの大半は、この味付けの無さから来る聴き疲れと物足りなさです。音が悪いのではなく、聴く側の期待と役割が合っていないだけです。
低音と高音を盛らないから迫力が出ない
普段使いのヘッドホンは、低音を太くして高音をきらびやかにする味付けがしてあります。ドンシャリと呼ばれる音です。モニターヘッドホンはこの味付けが無いので、同じ曲を聴き比べるとベースが軽く、シンバルが地味に聞こえます。
ロックやEDMを気持ちよく聴きたい人ほど、最初の1曲で拍子抜けします。これは故障でも安物でもなく、そういう設計です。
楽器が近くに聞こえて疲れる
音の情報量が多く、楽器が1本ずつ分かれて近くに聞こえます。フジヤエービックの記事でも、分離して聞こえる分だけ聴き疲れしやすいと書かれています。
2時間続けて聴くと、耳よりも先に頭が疲れる感じが出ます。集中して聴く分には長所で、流しっぱなしにする使い方には短所になります。
録音の粗までそのまま出る
古い音源や圧縮率の高い音源は、ノイズや歪みまで隠さずに聞こえます。動画サイトの音声を聴くと、マイクの吹かれや部屋の反響が気になって内容に集中できないこともあります。
逆に、きちんと録られた音源は細かい息づかいまで分かります。聴く音源の質がそのまま満足度になるヘッドホンです。
通勤や外出で困るのは有線と音漏れと音量
外で使うと、家では気づかない困りごとが3つ重なります。有線しかないこと、開放型は音漏れすること、スマホでは音量が足りない機種があることです。買ってから気づく人が多いので、外で使う予定があるなら先に確かめましょう。
ワイヤレスの機種がほとんど無い
モニターヘッドホンは音の遅れを嫌うため、ほぼ全部が有線です。ケーブルは2.5mから3mの長さが多く、スタジオの卓につなぐ前提の長さです。
電車の中では余ったケーブルが足元まで垂れて、カバンや吊り革に引っかかります。外で使うなら、1.2mの短いケーブルに差し替えられる機種を選んでください。
開放型は電車で音漏れする
開放型は耳の外側が網になっていて、音が外に抜けます。音の広がりが自然で長時間聴いても疲れにくい反面、隣の席に曲がそのまま聞こえます。
逆に外の音も入ってくるので、電車の走行音で低音が消えます。外で使うなら密閉型の一択です。
スマホでは音量が足りない機種がある
インピーダンスという数字が大きい機種は、スマホの出力では音量が上がりきりません。ブルックテックPCの記事では、32Ω以下ならスマホで鳴らせて、64Ω以上はヘッドホンアンプが要るとされています。
業界標準と呼ばれるSONYのMDR-CD900STは63Ωで、しかもプラグが太い標準プラグだけなので、変換プラグが無いとスマホに挿せません。買う前に、その機種の数字とプラグの形を見ておきましょう。
自宅で音楽を聴くと蒸れと側圧が先に来る
家でゆっくり聴く場面では、音よりも装着感の困りごとが先に出ます。密閉型は1時間で耳の周りが蒸れ、側圧の強い機種は頭の横が痛くなります。音に慣れる前に付けるのが嫌になるので、ここは軽く見ないでください。
密閉型は1時間で蒸れる
密閉型は耳を覆う部分に合成皮革が多く、夏場は30分で汗をかきます。イヤーパッドの汗は放っておくと表面がひび割れて、細かいかすが耳に付くようになります。
使い終わったら乾いた布で拭き、週に1回はパッドを外して裏まで拭きましょう。パッドは1年から2年で交換する消耗品です。
側圧が強い機種は頭が痛くなる
録音現場で頭を動かしてもずれないように、側圧を強めにしてある機種があります。フジヤエービックの記事でも、締め付けの強いヘッドホンを長時間使うと頭痛が出ることがあると書かれています。
MDR-CD900STはイヤーパッドが薄く、耳たぶが押されて痛くなる人が多い機種です。家で音楽を聴く用途なら、パッドが厚い機種か開放型を選ぶほうが長く付けていられます。
迫力が欲しい曲は物足りないまま
家で聴く用途で一番よくある不満が、低音の量です。慣れれば聞こえていなかった音が分かって楽しめる人と、最後まで物足りない人に分かれます。
個人的には、聴く曲の半分以上がロックかヒップホップなら、リスニング用を1本持っておくほうが楽だと感じます。1本で全部をまかなおうとすると、どちらの場面でも不満が残ります。
DTMや配信で困るのはアンプとエージングの手間
制作や配信で使う場面では、音の正直さはそのまま長所です。困るのは、鳴らすための機材と、音が落ち着くまでの時間がかかることです。ヘッドホン単体で完結しないことを、買う前に頭に入れておきましょう。
オーディオインターフェースが要る場合がある
パソコンのイヤホン端子に直接挿すと、音量が足りなかったりノイズが乗ったりします。ブルックテックPCの記事でも、機種によってはオーディオインターフェースなどの出力機器が必要になると書かれています。
マイクで配信する人はどのみちインターフェースを買うので問題になりません。ヘッドホンだけ先に買う人は、パソコン直挿しで鳴る32Ω以下の機種から始めるほうが早いです。
音が落ち着くまで50時間から100時間かかる
買ったばかりの機種は、振動板が硬くて音が硬く聞こえることがあります。同じ記事では、50時間から100時間ほど使うと音が落ち着くとされています。
初日の音で判断せず、1週間は普通に使ってから評価しましょう。買ってすぐ手放す人の多くが、この時間を待っていません。
ミキシングは開放型で録音は密閉型と分かれる
フジヤエービックの記事では、マイクで録るときは音漏れしない密閉型、編集のときは音の広がりが分かる開放型と書き分けています。1本で両方をやると、どちらかで我慢が要ります。
配信で歌う人は密閉型、打ち込みだけの人は開放型が向きます。両方やるなら、先に密閉型を買って、編集用は後から足す順番が無駄になりません。
困らない買い方はインピーダンスと型で決まる
ここまでの困りごとは、買う前に4つの数字と形を見れば、ほとんど避けられます。インピーダンスは32Ω以下、ケーブルは着脱式、パッドの交換品があること、そして使う場面で開放型か密閉型かを決めることです。
スマホでも使うなら32Ω以下
外でも家でも使う人は、インピーダンスが32Ω以下の機種に絞ります。オーディオテクニカのATH-M50xは38Ωで、公式サイトでは標準プラグと3.5mmの両方に対応する変換プラグが付属するとされています。
63Ωの機種が気に入った場合は、小さなヘッドホンアンプを一緒に買えば外でも使えます。ただし荷物が1つ増えるので、その手間を受け入れられるかで決めてください。
ケーブルは着脱式でパッドは交換品があるもの
有線で使う以上、いつか断線します。ケーブルが着脱式なら、ケーブルだけ買い替えれば済みます。直出しの機種は修理に出すか、自分でハンダ付けをするかになります。
イヤーパッドも同じで、交換品が単品で売られている機種を選びましょう。定番の機種ほど部品が長く供給されていて、10年使っている人が珍しくありません。
試聴では側圧と30分後の耳を見る
店で試聴するときは、音より先に側圧を確かめます。付けて5分で頭の横が気になるなら、家で1時間は持ちません。
耳たぶがパッドに押されていないか、眼鏡のつるが痛くないかも見ておきましょう。試聴機が無いときは、レビューで「側圧」「耳が痛い」と検索してから決めてください。
開放型か密閉型かは使う場所で決める
| 使う場所 | 向く型 | 理由 |
|---|---|---|
| 電車や職場 | 密閉型 | 音漏れせず外の音も入らない |
| 自宅で長時間 | 開放型 | 蒸れにくく疲れにくい |
| マイク録音や配信 | 密閉型 | マイクに音が回り込まない |
| 打ち込みや編集 | 開放型 | 音の広がりと定位が分かる |
迷ったら密閉型です。使える場所が多く、後から開放型を足しても無駄になりません。
モニターヘッドホンが向く人と向かない人
デメリットが気にならない人と、どうしても気になる人がいます。音を確かめたい人には向き、音に浸りたい人には向きません。自分がどちらかを先に決めると、買った後の不満がほぼ消えます。
向かない人
- 通勤でワイヤレスに慣れていて、ケーブルが嫌な人
- 低音の迫力で気分を上げたい人
- 流しっぱなしで長時間聴く人
- スマホ直挿しで完結させたい人
この4つのうち2つ以上に当てはまるなら、リスニング用のヘッドホンのほうが毎日を気持ちよく過ごせます。無理にモニター用を選ぶ理由はありません。
向く人
- DTM、配信、動画編集で自分の音を確かめる人
- 楽器の練習で、自分の演奏の粗を聞き取りたい人
- FPSなどのゲームで足音の方向を知りたい人
- 1本を修理しながら10年使いたい人
フジヤエービックの記事では、定位が分かりやすいことからFPSゲームにも向くとされています。音を聴くのではなく、音で何かを判断する用途なら、味付けの無さがそのまま強みになります。
買うなら用途を1つに決めてから
モニターヘッドホンのデメリットは、音が正直なこと、有線なこと、機種によってはスマホで鳴らしにくいこと、装着感が硬めなことの4つに集約されます。用途を1つに決めて、その場面に合う型と32Ω以下という数字で選べば、この4つは買う前に避けられます。
通勤にも使うなら密閉型で32Ω以下、家で長く聴くなら開放型、配信や録音なら密閉型です。ここを決めずに業界標準という言葉だけで買うと、最初の1週間で棚に置く結果になります。
もし今すでに手元にあって困っているなら、短いケーブルへの交換、厚いパッドへの交換、小型アンプの追加の順に試してみてください。買い替える前に、この3つで半分以上の困りごとは消えます。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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